「定年後の趣味」と言えば、テレビで紹介されるゴルフやガーデニングを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、私にとって第二の人生を鮮やかに彩ってくれたのは、全国の古城を巡る旅でした。
子育てが一段落した60代の今こそ、歴史、友情、冒険の全てが詰まった趣味に挑戦する絶好のタイミングです。
はじめに(動機と課題意識)
還暦を迎える少し前から、私は「このまま日々が淡々と過ぎていくだけで本当に良いのか」と自問するようになりました。
仕事では部下のサポートに回ることが増え、子どもは独立。時間ができたことで逆に「自分らしい生き方や新しい生きがい」を探し始めました。
ある日、読んだ歴史小説と大阪城の取材記事がきっかけで「城巡り」という趣味に目覚めました。今振り返れば、あの日が私の人生の舵を大きく切り直す転機だったのかもしれません。
この趣味を通じて得られた数々の体験談や心の変化を、現役の60代男性の視点から紹介したいと思います。
60代から始めた趣味:なぜ古城巡りなのか?
私が古城巡りを始めた理由は、子育てや仕事が落ち着き、自分の時間を持てるようになったことが大きいです。
自分だけの時間ができてから、私はまずウォーキングやゴルフに挑戦しました。しかし、どこか単調で「続ける理由」を見失いがちでした。
そんな中、幼い頃に父と一緒に訪れた姫路城の記憶がふと蘇り、「城」や「歴史」に興味が再燃。最初は週末だけ大阪城や近隣の城を訪れていました。
ある日、偶然耳にした“日本百名城スタンプラリー”の存在を知り、「これなら旅の目的になる」と早速スタンプ帳を購入。
健康維持にもピッタリで、城ごとに違う石垣や城下町を歩くことで毎回新しい発見がありました。
「城ってみんな同じでしょ?」と友人に言われたことがありますが、むしろ一つとして同じ城はありません。
春夏秋冬で景色が変わり、地元の人との会話で知る昔話には思わず引き込まれることも。
60代の今だからこそ、物事にじっくり向き合える時間があり、その城に刻まれた人生を想像して楽しむ余裕が生まれました。
年齢を重ねると健康や人間関係にも様々な変化が生まれ、心身ともに新しい刺激が欲しくなります。

そんな時、子供時代の歴史好きが再燃。地元・大阪城を皮切りに、小旅行気分で日本全国の城へと足を伸ばすようになりました。
城めぐりは、健康維持や頭の体操にもなります。特に山城はウォーキング要素が強く、体力づくりにも最適です。
さらに、地域の歴史や文化、地元の方との交流もあり、毎回新しい発見と出会いが待っています。
初めての古城巡り:ドキドキの体験談
私の「初めての古城巡り」は、奈良の高取城でした。

体力に不安もあり「登山みたいなものだ」と聞いて少し尻込みしていました。
朝7時に自宅を出発し、現地では地元のボランティアガイドさんが「今日は風が強いから頂上からの景色は格別ですよ」と声をかけてくれました。
途中、山道で転倒しそうになり、前を歩くご年配の男性が「ここは砂利が多いから注意して」と助言。会話がきっかけで戦国時代の話題で盛り上がり、下山後は一緒に蕎麦屋でもう一杯。
さらに、登城記念のお城印を初めて手にした瞬間は本当に感動しました。「この印を見るたび、その景色、出会った人、歩いた道を思い出す」。
これが私のコレクション趣味の始まりです。
その後も、全国各地で地元の方から昔話や城主伝説を聞き、小さなアクシデント(財布を落として警備員さんに見つけてもらうなど)を乗り越えることで、旅の醍醐味と達成感を積み重ねてきました。
日本百名城スタンプラリー:目標が生きがいに変わる
60代からの生きがい作りにうってつけなのが「日本百名城スタンプラリー」です。

城を目指して旅するうち、「日本百名城スタンプラリー」を知りました。
最初は12城しか巡れませんでしたが、「あと何城だ」と毎週末の遠征が生きがいや目標になっていきました。
特に2024年春、熊本城で震災復興の様子を見学した時は「復興城主」として名前のプレートを目にし、感慨深さがひとしおでした。
休日は混雑していましたが、平日は落ち着き払った城内で学芸員さんから昔の城主のエピソードを伺うことができ、「城ごとに違う物語」が発見の連続でした。スタンプ帳には今では53個の印があり、あと半分。その度に「次はどこへ」「来週は遠征できるか」と楽しみが広がっています。
体調管理と事前準備:60代ならではの注意点
体力に自信がない方も心配ありません。無理のないスケジュール設定と、歩きやすい靴・服装が大切です。

「山城はキツイ」という印象が先行しますが、私自身も最初は半日でヘトヘトになったことがあります。
特に夏場の城巡りでは、水分補給と体調管理が最重要です。
ある日、奈良の多聞城で凍らせたペットボトルをポケットに入れて登ったら、途中で冷たさに助けられ、頂上のベンチで地元の方々と涼しさをシェアしたことも印象的です。
歩きやすい靴・杖・軽量リュックは必需品。城ごとに整備状況も違うので、事前に公式サイトやSNSで登城者の感想をチェックするクセがつきました。
最近は「発見!ニッポン城めぐり」アプリを旅前に必ず開いて、ルートと休憩ポイントを調べています。
城下町の歴史探訪:「城だけでない」魅力と味わい
城だけでなく、その周辺の「城下町」で歴史探訪するのも大きな魅力です。

例えば、尾張・岩崎城では町のお祭りで地元の太鼓保存会の方と交流し、明治・大正時代の資料館で町の移り変わりを学びました。
駅前のカフェで常連客に「昔のSLが走った頃は観光客が増えた」と教えてもらい、その場でSL乗車体験を計画したこともあります。
対話や現地ならではの手作り地図が旅を劇的に面白くしてくれます。
また、秋の富山・高岡城では紅葉と城跡池が鏡のように輝き、地元商店で名物団子を味わって「味覚も歴史の一部」と実感できました。
各地の特色ある乗り物や絶景ポイントも、古城巡りの旅を一層充実させてくれます。
知識と実体験の融合:歴史の深みを感じる
私は若い頃から歴史本は好きでしたが、実際に現地を訪れることで「本物の歴史」「生きた知識」を得られます。

本で読む歴史と現場で体感する歴史は全く違います。
城仲間と訪れた小倉城から津和野城への遠征では、現地の梨農家さんから昔の水運の話を聞き、城下町が栄えた理由を実感。
地元の高齢者が語る「大阪万博のころは、本丸で演芸大会があった」といった昔話は意外な知識の源です。
時代ごとに城や町の選択した生き方を肌で感じ、「これは自分で歩いてみないとわからない」と実感します。
古城巡りがもたらす心の変化:孤独感の解消と心の活性化
60代以降は仕事や家庭からの孤立を感じることもありますが、城巡りや歴史探訪はそうした心の不安を解消してくれます。

仕事や家庭から距離ができてさみしさを感じていた私に、城旅は新しい出会いをもたらしてくれました。
偶然、城跡で休憩していた際に隣り合った60代の男性と自慢の資料や城下町MAPを見せ合い、その場でSNSを交換して月一の「城友会」に参加することになりました。
こうした小さな人との交流が「日常に新しい活力」を与えてくれます。
お城好きが集まるグッズ市で若者と昔話を語り合い、世代を越えた友人ができました。
こうした小さな交流が日常に新しい生きがいを与えてくれます。
クリアファイル・御城印集めの楽しみ
城巡りの副次的な楽しみが「御城印・クリアファイル集め」。

各城で売っている限定デザインは、旅先でしか入手できない特別な思い出になります。
ぼんてん・まるのクリアファイルは旅行資料の整理に大活躍になり、
熊本城の復興記念ファイルは家族へのお土産に好評になりました。
高取城の季節限定印は登城時期で絵柄が変わるため、複数回訪れて楽しむことも
グッズ集めが旅の新たな理由となり、家で整理しながら次の行き先を地図と照らし合わせて計画する時間も楽しみの一つです。
旅の中で起きたトラブルと乗り越え方
もちろん困難もありました。

当然、旅には困難もつきものです。
ある夏の日、岐阜・郡上八幡城でGPSが誤作動し、登山道外に出てしまったことがありました。
地元の中学生が「ここ、地元でも迷う人多いですよ」と親切に案内してくれたときは本当に救われました。
熊本城の急な坂で膝が震え、途中で休憩することになった時は、隣で休んでいた方が「膝サポーター、重宝しますよ」と教えてくれてさっそく購入。
帰り道も無理せず、地元のカフェで新たな情報交換の輪が広がりました。
旅は失敗から学ぶことも多く、この年齢だからこそ慎重に準備し、地元の人に相談して乗り越える力が身につきます。
まとめ/人生100年時代の趣味選び
「城巡り」や「歴史探訪」は、体力や年齢を言い訳にすることなく始められる趣味です。
スマホや交通機関の進化で情報収集やアクセスがとても楽になり、大阪・名古屋周辺には魅力的な城や史跡が数多くあります。
知的好奇心とちょっとした冒険心だけで、新しい世界がどんどん広がります。

私自身、旅を続けることで「まだできることがある」「もっと外に出て関わりたい」といった前向きな気持ちを得ることができました。
おわりに
もし「これから何か始めたい」「新しい生きがいや友人を探したい」と感じている方がいたら、ぜひ歴史探訪や城巡りにチャレンジしてみてください。
歩くことで健康も維持でき、心に新しい光が射すはずです。
60代からの趣味として、「古城巡り」は最高の生きがいになるはずです。
私自身の体験と、多くの仲間たちの物語が、みなさんの新しい一歩のきっかけとなれば幸いです。
【この記事が、あなたの新しい趣味や生きがい探しの背中を押すことを願っています】
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