60代に入ってから、夜の過ごし方が大きく変わりました。
以前は布団に入ると自然と眠りに落ち、「気づけば朝」というのが当たり前でしたが、還暦を迎えるころから徐々に変化が訪れました。
夜中に2~3回目が覚め、トイレのあとに再び眠るのに苦労する。布団の中で頭だけが冴え、1時間以上も考えごとをしてしまう。
そんな夜が増えていき、朝を迎えるたびに体が重く感じるようになりました。
最初のうちは「一時的なものだろう」と軽く考えていましたが、眠れない日が増えるにつれて焦りが強くなりました。
「こんなに寝つけないのは自分だけなのか?」と心配になり、ネットで“不眠”や“睡眠改善”の情報を探し回りました。
しかし信頼できる医療情報を読むうちに、「加齢とともに睡眠時間や深さが変わるのは自然なこと」と知り、肩の力が抜けました。
8時間続けて眠れなくても、「日中に強い眠気がなければ十分」と考え直すようになってから、心がずっと軽くなりました。
それ以来、私は「60代の今の自分に合う眠り方」を探す小さな実験を重ねてきました。
この記事では、半年以上かけて試した結果から、実際に役立った工夫、合わなかった方法、そして気づいた心の持ち方を紹介します。

夜中に目が覚めたときの「やり直し方」
60歳を過ぎてから、「体は横たわっているのに頭が冴えて眠れない」という夜が増えました。
トイレに起きて布団に戻っても、翌日の予定や過去のことが次々と頭を巡り、時計ばかり見てしまう。そんな夜が続くと、翌朝の疲労感が重くのしかかります。
当時の私は、「このままじっとしていれば眠れるはずだ」と思い込み、寒い部屋で息を潜めていました。
しかし、その我慢の時間こそが一番つらく、心身をすり減らしていたのです。
ある夜、「もうこのまま朝を迎えるくらいなら、いったん仕切り直そう」と思い立ちました。
そこで始めたのが「眠る準備をやり直す」という小さな儀式です。
今では、夜中に目が覚めて20分以上眠れないとき、次の手順でリセットしています。
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トイレから戻ったら、そのままリビングへ移動。
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スリッパを履き、足首を軽く回して血の巡りを戻す。
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イスにつかまり、2~3分だけストレッチ。
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椅子に座り、深呼吸をゆっくり5回ほど繰り返す。
呼吸のたびに「眠れていなくても、体を休めているだけでいい」と心の中でつぶやきます。
この“言葉がけ”によって、眠れない自分を責める気持ちがやわらぎます。
この習慣を取り入れてから、布団の中で焦り続ける時間が減りました。
眠り直せない夜があっても、「今できることをやった」という感覚があるだけで、翌朝の気持ちはまるで違います。
朝の光と「決まった朝食」で体内時計を整える

退職後は起床時間が不安定になりがちでした。「昨日眠れなかったから今日は遅くまで寝よう」と思ってしまうと、夜の寝つきがさらに遅れ、悪循環に陥ります。
そこで、「起きる時間と朝食だけは固定する」と決めました。平日も休日も朝6時半に目覚ましをセットし、起きたらまずカーテンを開けて朝日を浴びるようにしています。
朝食は7時前後を目安に、
・パンとコーヒーの日
・ご飯と味噌汁の日
といった2パターンに分けています。
小さな儀式のようですが、「朝はこれをする」という流れが生まれると、一日のリズムが安定しました。
以前は夜の眠気がなかなか訪れませんでしたが、起床時間と朝の光の習慣を整えてから、夜には自然と「ああ、今日はよく動いた」と心地よい眠気を感じるようになりました。

日中の過ごし方で眠気が変わった

以前の私は、「眠れないのは夜の行動に原因がある」とばかり考えていました。
しかし実際は、昼間の過ごし方、つまり“体の使い方”が大きく関係していました。
まず試したのが、朝食後の30分散歩です。自宅近くの川沿いをゆっくり歩き、風の冷たさや鳥の声を感じながら季節の変化を味わう。
その感覚が、生活全体のリズムを整えてくれました。
散歩を続けるコツは、「楽しみを仕込むこと」です。
季節ごとに違う花を一つ見つける、川の水面の色を昨日と比べる、雲の形を何かに例える。
そうした“小さな遊び”があると、歩くのが楽しくなります。
メモ帳に「今日の散歩で見つけたもの」を書き留めるようになってから、自分の日々の変化が見えてきました。
気づけば運動というより、心のリセット時間になっていました。
この習慣を始めて2か月ほど経った頃、夜の寝つきに変化が出ました。
以前は週に4〜5回「1時間以上眠れない夜」がありましたが、今では週に1〜2回程度に減っています。

寝る前1時間を「夜の支度時間」に

以前は「早く寝るほど健康的だ」と信じて、眠くなくても布団に入っていました。
その結果、天井を見つめながら時間ばかり過ぎ、不安が募っていきました。
そこで、「眠くなるまでは寝室に行かない」とルールを決めました。
夕食後はリビングの照明を少し落とし、ラジオを小さく流しながら読書。スマホやテレビは寝る30分前にオフにします。
このとき私は“夜の支度時間”と呼ぶストレッチを行っています。
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首をゆっくり回す
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肩をすくめてストンと落とす
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背中を丸めてからゆっくり反らす
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深呼吸を3回繰り返す
この短い動きで「一日が終わる」スイッチが入ります。
眠気が自然にくるのを待ち、時計ではなく体の感覚を頼りに布団へ入る。これだけで、寝つきは明らかに改善しました。
食事・飲み物・昼寝の見直し
60代に入ってから、夕食の内容や時間が眠りに影響することを実感しました。
仕事帰りの遅い食事や油物、コーヒーは眠れない夜の原因でした。
今は18時前後に夕食を終えるように意識しています。メニューは豆腐、納豆、白身魚、野菜中心のシンプルな和食。飲み物は麦茶か白湯です。
カフェインを控えるだけで夜中のトイレが減り、眠りが途切れにくくなりました。
昼寝も“悪者扱い”せず、上手にコントロールしています。
昼過ぎに強い眠気を感じたら、椅子に浅くかけて20分以内の仮眠。
午後3時以降はしないようにしています。
この方法なら夜の寝つきを妨げず、午後の集中力も保てます。
以前の寝室は空調が極端で、夏は暑く、冬は乾燥。おかげで眠りが浅くなりがちでした。
そこで、「心身が落ち着く環境作り」を少しずつ進めていきました。
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夏は通気性の良いシーツ+弱冷房。
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冬は軽い羽毛布団+湯たんぽ。
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照明は寝る30分前にスタンドライトへ切り替え。
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波の音や雨音などの環境音を小音量で流す。
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枕元に弱いラベンダーの香り。
これらを続けるうちに、「寝室に入ると安心する」という感覚が育ってきました。
環境そのものが“入眠のサイン”になり、夜中の覚醒回数が減ったのです。
就寝前30分の「心を整える時間」
寝る前の30分間は、何よりも大切な時間です。この間だけはスマホを見ず、ストレッチと音楽だけに集中します。
リビングの照明を少し落とし、静かなピアノのBGMを流すと、自然と心が鎮まっていきます。
また、「今日の振り返りノート」を書くようにしています。
100円ショップのメモ帳に、次の3つを書くだけです。
たとえば「花の香りを感じた」「孫から電話が来た」「窓から見た夕焼けがきれいだった」など、些細なことで構いません。
これを書くだけで、不思議と心が穏やかになり、呼吸が深くなります。
最後に首や肩を軽く動かし、「今日もよく頑張った」と自分をねぎらって布団に入ります。
“いい眠り”の前に必要なのは、“自分を否定しない夜”だと、今でははっきり分かります。
「完璧な睡眠」を手放す
若い頃は「8時間眠れなければ体に悪い」と思っていました。
ところが、理想を追うほど眠れない夜が増えてしまったのです。
今では、次の2つが満たされればそれで合格としています。
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日中に強い眠気がない
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朝に体の重さをあまり感じない
このシンプルな基準に変えてから、睡眠へのプレッシャーが減り、かえって安定して眠れるようになりました。
「完璧」よりも「まあまあ良し」と思える心の余裕こそ、60代の快眠には欠かせないと感じています。
生活の工夫だけで難しいときは
ここまで紹介したのは、あくまで私個人の体験です。
生活習慣の工夫で改善するケースもあれば、医療のサポートが必要になることもあります。もし、
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何週間も極端に眠れない
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日中の眠気で生活に支障がある
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不安感で夜が苦しい
といった状態が続くようなら、遠慮なく医療機関に相談してください。
薬や持病が関係していることもあります。医師と相談しながら、安心できる方法を見つけることは、自分を守る大切な行動です。

おわりに:「昨日より少し楽な朝」を迎えるために
60代の睡眠は、若い頃のように“ぐっすり8時間”とはいきません。
それでも自分のリズムを見つけ、小さな工夫を積み重ねることで、「昨日より少し楽な朝」に近づけることはできます。
この記事で紹介したことの中から、一つだけでも「これならできそう」と思える工夫を、今夜から試してみてください。
特別な道具もお金もいりません。必要なのは、自分の体と心の声を少し聞いてあげる時間だけです。
眠れない夜が完全になくなることはなくても、“不安を和らげる夜”を重ねることで、確実に心と体は整っていきます。
同じように眠りに悩む60代の方が、「ああ、自分だけじゃない」と感じてくださったら、それがこの記事を書いた一番の喜びです。

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