シングルライフ

60代一人暮らしの防犯:あやしい電話が来た日の話

シングルライフ

こんにちは。ブログ「クライシス」を書いているゴンタです。1963年生まれの63歳、結婚したことはなく、子どももいません。大阪市で一人暮らしをしています。

43歳から57歳までの14年間は福井県の三国町にある特別養護老人ホームで、57歳からの6年間は大阪で介護ヘルパーとして働きました。2026年の3月に仕事をやめ、8月には今の部屋に引っ越してきました。

退職してすぐの4月、前の部屋にいたときに、わたしの甥(おい)を名乗る男から電話がかかってきました。お金は渡さずに済みましたが、受話器を置いたあと、しばらく手のふるえが止まりませんでした。介護の現場でお年寄りがだまされかけた話を何度も聞いてきたのに、自分のこととなると、ほんの数分で心がぐらついたのです。

この記事では、その日のことを順番にお話しします。その前に、60代の一人暮らしが狙われやすい理由と、よくある電話の手口、わたしが実際に始めた対策をまとめました。一人暮らしの方や、離れて暮らす親が心配な方の参考になればうれしいです。

60代の一人暮らしがねらわれやすい理由

電話を使った悪い人が、なぜ60代の一人暮らしに目をつけるのか。自分の暮らしをふり返ると、思い当たることが三つありました。

昼間に家の電話に出る

仕事をしていたころ、平日の昼間はほとんど家にいませんでした。退職したとたん、朝から夕方まで家にいる日が週に5日ほどになりました。昼間に家の電話に出る人は、悪い人にとって話を進めやすい相手です。

その場で相談できる人がいない

家族と住んでいれば、電話を切ったあと「さっきの電話、おかしくない?」と聞けます。一人暮らしだと、聞く相手がいません。わたしの場合、いちばん近い身内は福井にいる1つ下の妹で、大阪からは電車で2時間以上かかります。

人と話す機会が少ない

退職してから、だれとも話さない日が週に2日ほどあります。そういう日にやさしい声で話しかけられると、つい長話をしてしまいます。

大阪でヘルパーをしていたころ、80代の女性の利用者さんが「毎週電話をくれる親切な人がいる」とうれしそうに話してくれました。くわしく聞くと、電話のたびに別の健康食品をすすめてくる業者でした。その方は相手を友だちのように思っていて、届いた箱が部屋のすみに10個以上たまるまで、おかしいと気づかなかったのです。

怪しい電話のよくある手口

警察や役所のチラシで紹介されている手口のうち、わたしのまわりで実際に聞いたものを三つ取り上げます。

家族や親せきのふりをする

「俺だけど」「風邪で声が変なんだ」と、名前を言わずに話し始めます。そのあと「会社のお金を失くした」「事故を起こした」と、お金がいる理由を話します。子どもがいないわたしにも、この電話はかかってきました。甥や姪、いとこのふりをされることもあるからです。

役所や銀行のふりをする

「区役所の保険の係です。払いすぎた保険料が戻ります」「銀行です。あなたのカードが悪用されています」という電話です。三国町の施設にいたころ、入所者のご家族が「役所の人に言われてATMに行きかけた」と話してくれたことがあります。警察は、役所や銀行が電話でATMへ行くように言ったり、暗証番号を聞いたりすることはないと呼びかけています。

時間を決めて、口止めをする

どの手口にも「今日の3時までに」「このことは誰にも言わないで」という言葉が出てきます。考える時間をうばい、人に相談させないためです。電話でこの二つを言われたら、そこで話を止めて切るようにしています。

わたしが始めた電話の防犯対策

8月に今の部屋へ引っ越したとき、電話の使い方を見直しました。お金がほとんどかからないものばかりです。

家にいても留守番電話にしておく

今は、家にいるときも電話を留守番電話に設定しています。流れるメッセージは「ただいま電話に出られません。お名前とご用件をお話しください」です。

本当に用事がある人は、名前と用件を残してくれます。この2か月で知らない相手から5回ほど電話がありましたが、メッセージを残したのは歯医者さんの予約の確認だけで、ほかは何も言わずに切れていました。

知らない番号には出ない

電話機の画面に番号が出るので、電話帳に登録していない番号には出ないことにしました。最初は失礼な気がしましたが、大事な用事の人は留守番電話に残してくれるので、今のところ困ったことはありません。

かけ直すときは、自分で調べた番号に

「区役所の〇〇課です」と名乗られたら、いったん電話を切ります。そして、相手が言った番号ではなく、区役所から届いた封筒や広報紙にのっている番号にかけ直します。銀行なら、通帳やキャッシュカードの裏にある番号です。

妹と「合言葉」を決めた

妹と電話で相談して、お金の話が出たら、二人しか知らない子どものころの話で本人かどうかを確かめることにしました。たとえば「実家の近くにあった駄菓子屋のおばちゃんのあだ名は?」という質問です。本物の家族ならすぐに答えられますが、他人には答えられません。

録音の機能がある電話機を調べた

電話をかけてきた相手に「この電話は録音されます」と自動で伝える電話機があります。家電店で店員さんに聞くと、1万円前後から売られていました。わたしはまだ買っていませんが、今の電話機がこわれたら、この機能があるものを選ぶつもりです。

電話だけでなく、家のまわりの防犯

一人暮らしでは、電話だけでなく玄関や郵便受けにも気をつけています。今の部屋で続けていることを三つ紹介します。

1分の外出でも鍵をかける

ゴミ出しや、50メートル先のコンビニに行くときも鍵をかけます。家にいるときも、玄関の鍵とドアチェーンはかけたままです。

インターホンで用件を聞いてからドアを開ける

誰かが来ても、すぐにはドアを開けません。まずインターホンで名前と用件を聞きます。「ガスの点検です」「水道の工事です」と言われても、事前にお知らせの紙が届いていないときは「管理会社に確認してから連絡します」と答えます。9月に一度、点検を名乗る人が来ましたが、そう伝えるとそのまま帰っていきました。

一人暮らしだと見せない工夫

郵便受けには名字だけを書き、下の名前は出していません。ベランダには、外から見えにくい内側に洗濯物を干しています。

困ったときの相談先

↓の項目は「これはだましの電話かな?」と迷ったとき、わたしが電話機の横に書いて貼ってある相談先です。

  • 110番:今まさにお金を渡しそうなとき、家の前にあやしい人がいるとき
  • #9110(警察相談専用電話):急ぎではないが、あやしい電話がかかってきたと相談したいとき。受付の時間は地域によってちがいます
  • 188(消費者ホットライン):「いやや」と覚えます。よくわからない契約や、しつこい売りこみの相談先です。近くの相談窓口につないでもらえます
  • 地域包括支援センター:お年寄りの暮らし全体の相談にのってくれる、市や区の窓口です

地域包括支援センターには、ヘルパーをしていたころに何度もお世話になりました。健康食品を買いつづけていた利用者さんのときも、センターの職員さんが業者とのやりとりを手伝ってくれました。

体験談:甥を名乗る電話が来た日

ここからは、2026年4月にわたしが実際に受けた電話の話です。

平日の昼すぎ、家の電話が鳴った

退職して3週間ほどたった平日の午後1時すぎでした。昼ごはんのあと、テレビを見ながら、うとうとしていたときに、前の部屋の固定電話が鳴りました。そのころは留守番電話にしていませんでした。

受話器を取ると、若い男の声で「あ、おじさん? おれ、おれ」と言います。妹には子どもが二人いて、上の子がわたしの甥です。わたしはとっさに、その甥の名前を口にしてしまいました。男は「そうそう」と、すぐに話を合わせてきました。

「会社のお金をなくした」

男は声をつまらせながら、「仕事で使うお金の入ったカバンを電車にわすれた」「今日中に300万円をもどさないとクビになる」「母さんには心配をかけたくないから、おじさんにしか言えない」と話しました。

わたしには子どもがいないので、甥のことは小さいころから、かわいがってきました。その甥に頼られたと思い、気づけば「いくら足りないんだ」と自分から聞いていました。

おかしいと思ったきっかけ

300万円は、わたしの貯金の半分近くにあたる額です。その数字を聞いて、少し頭が冷えました。

甥はまじめで、人にお金を頼むのが苦手な性格です。本当に困ったら、まず母親である妹に相談するはずです。それに、男の話し方には福井のなまりがまったくありませんでした。甥は電話だと「〜やざ」「〜してもた」と福井弁が出るのに、男は東京の言葉で話していました。

そこで、三国町の施設にいたころ、入所者のご家族から聞いた話を思い出しました。その方も同じように「会社のお金をなくした」という電話を受け、銀行に行く直前で気づいたそうです。そのとき教わったのが「一度電話を切って、本人の番号にかけ直す」という方法でした。

電話を切って、妹に確認した

わたしは「今手が離せないから、あとでこっちからかけ直す」と言いました。すると男はあわてて、「時間がないんだ」「携帯の番号が変わったから、この番号にかけて」と早口で言ってきました。ここで、だましの電話だろうと思いました。

電話を切ってすぐ、妹の携帯に電話しました。妹は笑いながら「あの子なら、今うちに来てごはん食べてるよ」と言います。電話をかわってもらうと、いつもの甥の声がしました。それを聞いたとたん、体の力がぬけて、台所の椅子に座りこみました。

あの日のあとに変えたこと

その日のうちに、最寄りの警察署に電話をして、どんな電話だったかを伝えました。警察の方は「同じような電話が近所で何件かあった。知らせてくれてありがとう」と言ってくれました。

その後、妹と合言葉を決め、8月の引っ越しを機に電話を留守番電話に切りかえました。前の章で書いた対策は、すべてこの日がきっかけです。

今思うと、一番危なかったのは、わたしのほうから甥の名前を言ってしまったことです。相手はわたしが言った名前に話を合わせただけでした。もし300万円より少ない金額を言われていたら、そのまま銀行へ向かっていたかもしれません。

まとめ

退職して家にいる時間が増え、相談できる家族が遠くにいる60代の一人暮らしは、電話をつかった悪い人にねらわれやすい立場にあります。わたし自身、介護の仕事で手口を知っていたのに、甥の名前を出されたとたんに心がゆれました。

わたしが今続けているのは、次の4つです。

  • 家にいても留守番電話にしておく
  • 登録していない番号には出ない
  • かけ直すときは、封筒や通帳にのっている番号を使う
  • 家族と合言葉を決めておく

どれも、今日からお金をかけずに始められます。あやしいと感じたら、一人で決めずに110番、#9110、188、地域包括支援センターに相談してください。

はなれて暮らす家族がいる方は、次に電話で話すときに合言葉を一つ決めておくことをおすすめします。わたしと妹の場合、5分ほどの電話で決まりました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ゴンタでした。

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